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アビスパ福岡

壱岐 友輔

「みんなで育成しよう」という意識が強くなった

これまでの簡単な経歴を教えてください。
壱岐 選手としてソニー仙台などでプレーした後、2000年からベガルタ仙台のアカデミーに所属し、21年間、お世話になりました。その間、スクール、ジュニア、ジュニアユース、ユース、全てのカテゴリーに携わりました。うち2年間、日本サッカー協会(JFA)のアジア貢献事業の一環でカンボジアに派遣され、U-14・15代表監督を務めました。

2021年、アビスパ福岡アカデミーのヘッド・オブ・コーチングに就任されました。
壱岐 自分のキャリアを考えたとき、もう一度、別の環境で力をつけることが大事だなと考えていました。そんな折、福岡からお話をいただきました。携わっている選手の成長をもう少し見守りたいという気持ちもありました。人生の半分以上を過ごしている仙台から離れるのは簡単なことではありませんでしたが、一人の人間として成長したいと思い、決断しました。 

現在の役割について教えてください。
壱岐 アカデミーに所属する選手たちをいかに昇格にまでつなげるか、彼らが昇格した後、どのように生産性を生み出すかを考えながら日々の業務に取り組んでいます。多岐に渡るため、業務を一言で説明するのは難しいのですが、クラブの社長やトップチームの強化担当者と話すこともあります。アカデミーのコーチングスタッフ、選手はもちろん、彼らの保護者とも面談を行い、選手の成長に一役買えればと考えています。 

アビスパ福岡アカデミーの特徴をご紹介いただけますか。
壱岐 「感動と勝ちにこだわる」というフレーズの下、アグレッシブかつスピーディーに、強い結束力で常に勝利を目指すのがわれわれのスタイルです。所属している選手の多くは九州出身。学年が下がるほど県内出身者が増え、逆にU-18年代になると県外からスカウトすることもあります。

 アーセナルで活躍する冨安健洋選手も福岡のアカデミー出身ですね。
壱岐 福岡は世界クラスの選手を育成した素晴らしいアカデミーですので、なぜそういう選手を育てられたかを精査し、理想の選手像を探しています。福岡にいたころの冨安選手の情報も残っています。冨安選手の最も優れていたところはパーソナリティー(性格)と予測能力です。今、福岡にいる選手には「フィジカルやスピードが特別強かったわけではない。日々の練習に真摯に取り組むことが重要」と伝えていますし、私自身にもそう言い聞かせています。 

当時の情報が残っていると、伝えやすいですね。
壱岐 選手の才能はいつ、どこで開花するか分かりませんので、日々の取り組みを残すことが重要です。記録を残しておけば、そこに価値が加わります。記録はクラブの財産ですし、その記録を共有するシステムも不可欠。その点、ProSoccerDataはみんなと共有することができるツールですので、重宝しています。 

福岡でPSDを導入する際に心がけたことは?
壱岐 シーズンの初めにコーチ全員を集めてミーティングを開き、データを蓄積することの重要性を説くとともに、PSDを活用することを明言しました。はっきりと伝えたことでコーチングスタッフもPSDへの入力を業務の一環と捉えてくれました。また、入力作業が習慣化されたことでスタッフ間の連係がさらにスムーズになりました。異なるカテゴリーのコーチが選手の成長具合を把握できますし、「みんなで選手を育成しよう」という意識が強くなったように感じます。 

主に使っている機能について教えてください。
壱岐 一番は「マッチレポート」です。各カテゴリーの担当者が試合後に詳細なレポートを書き、提出します。それに対して私は各試合のレポートをチェックし、必ずフィードバックを送ります。マッチレポートに試合映像のURLが貼られているので、カテゴリーを問わずスタッフ全員がどんな試合だったかをチェックすることができます。ほかにも複数の機能を活用していますが、常にPSDにデータを集約させることを心がけています。

 コーチの皆さんは最初から使いこなせましたか。
壱岐 助け合いながら慣れていきました。入力は地味で大変な作業ですが、「クラブの財産になるから」と頑張ってくれました。当然ながら、入力を始めたときはデータがありません。「入力する意味があるのかな」と半信半疑なスタッフもいました。ところが、1年続けると、データを見返したとき、この入力はこういう部分で役に立った、選手の成長が可視化されたという手応えが生まれ、それが継続することにつながっているようです。

あらためて、データの有用性についてどのようにお感じですか。
壱岐  それまで感覚として捉えていたものを文字や数字にするわけですから、それだけで大きな変化です。みんなが知らなかったこと、分からなかったことを形にすると、コミュニケーションが生まれます。「あの選手についてこう評価していたけど、そんなにダメでしたか?」といった具合です。逆に、何も書いていなかったら、会話にならない可能性が高い。選手のデータを管理しながらみんなで見られるのは貴重です。大変ですが、コーチが入力したものがより正確なデータとなって反映されるように、しっかりと「たたき台」をつくることも重要な要素だと思います。